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目覚めたのは
すべてを瞬時に焼き尽くす黒炎の中
それなのに《熱》を感じない。
自分自身が黒炎そのものだからなのか…?
俺を、愛を知らぬ幼子と賢者は言った。
賢者に与えられた偽物の家族。くすぐったいゆらぎがそこにあって
…俺は少しだけ眠れた。
だが繰り返し見る
何度も俺を呼ぶ冷たい声
体に刻まれた支配の記憶
感動の無い暗闇の中、虚ろに眺めた蝋燭の赤い揺らめき。
美しい、と思った。
触れたら温かいのかもとさえ。
触れれば消えることがわかっていたから…触らなかった。
ただ、憧れていたかった。
《熱》に
《身を焦がすもの》に
そして
《ぬくもり》に
身動げばゆらりと炎が応えて揺れた。
そんなことすら嬉しくて。
乾いた声であえぐふりして笑った。
闇の中で。
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