第一章「暗い思う出の場所へ」

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「ええ!?女子寮!?なんでまた俺が!?」 啓次郎が電話に向かい、叫んでいた。 「でもばあちゃん、あそこって旅館じゃなかったっけ?」 『おぉ。儲からんから女子寮にしたんじゃ。わしももう長くはないからのぅ、それで世界旅行に出かけようとおもっとるんじゃ。だから啓次郎に管理人を任せるぞぃ。晴香にも伝えてあるから一週間後には向こうへいっとれ』 啓次郎に「ばあちゃん」と呼ばれた人物は、聞いてのとおり啓次郎の実の祖母、羽田さくらであった。さくら旅館を運営していたのだが、旅行へいくからさくら荘をまかせるといってきたのだった。 「で、でも、ばあちゃん。俺の仕事が何かわかってるだろ?そんな無茶な・・・」 ツーツーツー・・・ 「あ゛ーもう!なんでウチの家系はいつもこう短気なんだ!」 といいつつも、その血をきっちり受け継いでいる啓次郎であった。 「あそこにはもう行きたくないんだけどなぁ・・・」 顔をゆがめる啓次郎。 「ったく・・・ばあちゃんはいつも・・・」 ブツブツと文句をいいながらもせっせと準備をしていた。 「おっと、晴香おばさんに挨拶しなくちゃ」 そう独り言をつぶやくと、啓次郎は和風茶房「桜」へと足を運んだ。
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