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図書館に向かうと榛がちょうど入って行く所だった。
「カードの提示をお願いします」
窓口にいた女は初心者らしくたどたどしい発言をする。希美はカードを探して、私服のポケットに入っていた事を思い出し、ないと答えると、女はお名前と誕生日をお願いしますとパソコンに向かう。館内に入れたのは15分後だった。
「榛さんどこだろ」
見回しても見つからず、窓から外を見ると正門に向かう榛を見つけ、後を追うが、榛はバスに出発ギリギリに走り乗り込んだ為、希美は走り出したバスを見送るしかできなかった。
「はぁ…」
ため息を吐いていると、大学生が通り過ぎる。
「土曜日なのに講義だよ」
「仕方ないよ、単位足りないんだし」
通り過ぎる大学生たちの教材を見ると、榛と同じ学部らしい。希美は、翌日に部活の顧問に休みを伝える。
「希美?」
幸司郎が、どうしたんだ?と近寄って来た。
「幸司郎、ちょっといい?」
部室に入って、掃除中の札を下げる。
「幸司郎、あのね、私、好きな人がいるの」
幸司郎は、バクバクと、うるさい心音に黙れと言い聞かせる。
「その人はね、大学生なの」
その人は、まで聞いて、まさか、と期待したが、大学生の言葉に落ち込む。
「だから、幸司郎の気持ちに答えられないの」
でも、友達としてまた仲良くしてくれないかな?と言う希美に、幸司郎は、拗ねた顔をする。
「いいよ、友達で。でも、俺は希美を好きなままだからな。フられても俺の心に空席在るからな」
希美は、吹き出して笑い出す。
「なんだよ、俺、めちゃくちゃかっこいい事言ったのに」
「だって似合わない」
あはは、と涙を拭きながら笑う希美に、幸司郎は、その笑顔見れれば友達でいいかもっと思って見つめる。
「じゃあ明日頑張って告白してくるね」
よしっと気合いを込める希美に幸司郎は内心、フられろ、フられろっと願わずにいられなかった。
翌朝、朝から大学生の図書館に入り浸り、校舎側の窓から見つめる。と榛が甲斐と校舎に入って行く場所が見えた。
「早く授業終わらないかな」
昼食はコンビニに向かい、戻ってくると榛が校舎から出てくる所だった。
「榛さん」
希美が手を振る。榛は、希美に気づくと図書館の中にそそくさと逃げ込む。避けられるかもっと言う甲斐の言葉を思い出したが、そんなことないっと自分に言い聞かせて後を追う。
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