拒絶と理由

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車から降りた榛に甲斐が手を振る。榛も手を振り見送る。 「榛」 瑞歩は、榛に近づいて肩を叩く。甲斐は瑞歩の雰囲気の違いに心配になり慌てながら車から降りる。 「今日はどうしたの?」 と手話で聞くと、瑞歩は榛に抱きつく。榛は心配そうに瑞歩の背中を撫でる。 「榛、私は」 言いかける瑞歩に甲斐が止めに入ろうとするが一歩遅く手が伸びない。 「私は榛を男として好き」 榛は瑞歩の唇を読んで、信じられないと言う顔をする。 [誤解してる、それは愛じゃない。僕達は付き合えないのはわかるだろ?] 一生懸命な手話に瑞歩は、誤解じゃないわ、と叫ぶ。 [僕は人を好きにならないし、それにこんな僕を好きになる人なんていない] 早い手話に、瑞歩は、悔しそうな顔をし俯く、手話の読み切れなかった甲斐は、瑞歩の顔色から良くないことを言われたのだろうと理解する。 「いるわよ」 俯いている瑞歩は小さな声で渡さないと笑うと顔を上げる。 「彼女、ノートを拾った女子高生。あの子は榛を好きみたい」 榛は、驚いた顔をする。 「彼女ねノートの本当の持ち主じゃないみたいよ?本当の名前は"赤坂希美"」 驚いた顔から一変し、愕然とした顔をし、真っ青な顔に変わりだす。甲斐は、あーあ、と言ってしまった現実に合う上手くいく説明を考えてガシガシと頭を掻く。 「どうする?せっかく好きになってもらっても付き合えないよね?そんな体でさ。また不幸にするの?希美を」 瑞歩はポロポロと涙を流しながら、ふふっと笑う。 「瑞歩!!」 頭を整理するより先に時間は早々と過ぎる。気が付くと瑞歩が言い過ぎていた為、慌てて止めに入る。 甲斐が榛の背中を押すと、榛は、ふらふらと自宅に入る。 「そうよ、逃げなさいよ、過去からもあの子からも…」 榛がドアの中に消えてから座り込んで泣き出す。 「ったく不器用な女だな、お前は。本当にかわいい奴」 甲斐は、瑞歩の頭を優しく撫でて、車に促す。瑞歩は虚ろな思考でふらふらと、甲斐の車に乗り込む。 大学が始まってからは毎日通ったが、榛に逢うことはなかった。 「希美ちゃん」 甲斐が近寄って来ると、希美は甲斐の腕を掴む。 「甲斐さん、榛さん知らない?」 落ち込むどころか、心配そうな顔をする。 「ずっと探してるのにいないの」 甲斐は寂しそうな顔をして、希美に、避けられるって思わないの?と聞くと、希美は、なぜ?と首を傾げて、もしかしたら図書館にいるかもっと図書館に向かう。
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