第二章

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杉村は二十歳の夏休みに、一週間ほど北海道に旅立った。 二十歳祝いの、成人を祝う一人旅だったらしい。 杉村は、太陽の光を反射してキラキラと輝く十勝川が印象的だったと、五年前の同窓会で酒を飲みながら話していた。そのときの杉村は満面の笑みを浮かべて笑っていた。 「太陽の光を反射してさ、十勝川がキラキラと輝いていたんだよ。印象的だったなぁ。空にはうっすらと雲が見えてさ、流れがすげぇ速いんだ。河川敷で日向ぼっこしてた人がたくさんいたよ。みんな楽しそうだったなぁ。十人くらいで来てた家族連れからさぁ、大きな笑い声が聞こえてな、そっち見たら芝生の上で寝ころんでた中年の男が昼間っからビール飲んで子供とじゃれ合って遊んでたよ。俺はそれ見てらんなくてさぁ、つい下向いちまった。秋でもないのに涼しくってなぁ。俺、気がついたら木の枝拾って遊んでたぜ。我に返ってすんげぇ寂しくなったけどな」
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