第二章

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「杉村くんと、アキヨシくん。久しぶりね」 という声が後ろから聞こえた。 振り返ると、野原が微笑んでいた。 僕は驚いて「おぉ」としか言えなかった。 「暑いですね」 と野原が言った。 「そうっすね」 と僕は答えた。 「お変わりありませんか?」 と野原。 「お変わりありませんよ」 と僕。 となりでニヤニヤ笑っている杉村が、 「お前ら、年取ったなぁ」 と言った。 若年寄りを気取ることが、今の僕らのブームだった。 野原を呼んだのは杉村だった。 野原は友達を連れてきていた。名前は「ユイ」といった。 ユイの長くて細いポニーテールはサラサラしていて、少しだけ栗色が混ざった黒髪だった。 背も小さく、やせ細っていた。 一目見て、ユイは僕の好みではなかった。
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