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しばらくして駆け込むように部屋に戻ってきた加地は、ものすごく慌てていた。
どうしたのだろうかと僕は無言で加地の言葉を待ったのだが、加地は何も言わなかった。
ただひたすら机に向かって、殴るように手紙を書いていた。
帰れよ、という仕草を加地が見せたので、僕は「また明日な」と言って、渋々帰るしかなかった。
「男ってのはスケベでバカな生き物だからよ。せめて暴力を振るわれておびえている女くらい助けてやりたいじゃないか」
加地がそう言ったのは、翌日の朝である。
「西本っていう大学生と野原は付き合ってるらしいんだけど、そいつ野原に暴力振るってるらしいんだよ」
僕はこの言葉を理解するのに、少しだけ時間がかかった。
「俺はその男をボコボコにしてやるんだ。だから今夜もお前付き合え」
と加地が言った。
なるほどな、と僕は思った。
中学二年生の不良が五人。たった一人の大学生におびえてたら情けない。
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