第一章

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「何も、なかったな」 僕らは、あっけにとられていた。拍子抜けをした感じだった。 加地だけは、ずっと走り出して消えていった車を、じっと見つめて動かなかった。 翌朝、僕が学校に行くと、高原という不良仲間の一人が、黒板に落書きをしていた。 中学生の男子がする落書きなんてワンパターンだ。 「おい高原!変なマーク書くなよ」 そう言ったのは、同じく不良仲間の杉村だった。 「なぁ、これ見たくねぇ?」 と高原。 「バカ!早く消せよ」 と杉村。 「もう一つ書いたら消すよ」 と言って、高原はそれをもう一つ書いて慌てて消した。 担任が来たからだ。 「バカもいい加減にしねぇとモテねぇぞ」 さりげなくそう言ったのは、新田だった。新田も不良仲間の一人である。
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