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野原に暴力を振るっていたのは西本ではなく、野原の兄貴だった。
三つ年上で、高校二年生の野原の兄貴が、野原に暴力を振るっていたのである。
それが分かったのは、僕らが学校帰りのいつもの場所でたむろしているときだった。
後ろから野原が近づいてきて、加地に向かってこう言ったのである。
「加地くん、心配させてゴメンね。西本さんは悪い人じゃないよ。加地くんにはウソついちゃった。まさか私が兄貴に殴られてるなんて、何となく後ろめたくて言えなかったのよ。ホントは兄貴と色々あってケンカしたの。兄貴の肋骨折ってやったわ。ねぇ加地くん、西本さんは恨まないでね。恨むなら私を恨んでいいから」
それだけ言って、野原は立ち去っていった。
加地はうなだれたまま、身動き一つしなかった。
かなりショックを受けている感じだった。
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