第一章

8/8
前へ
/58ページ
次へ
野原に暴力を振るっていたのは西本ではなく、野原の兄貴だった。 三つ年上で、高校二年生の野原の兄貴が、野原に暴力を振るっていたのである。 それが分かったのは、僕らが学校帰りのいつもの場所でたむろしているときだった。 後ろから野原が近づいてきて、加地に向かってこう言ったのである。 「加地くん、心配させてゴメンね。西本さんは悪い人じゃないよ。加地くんにはウソついちゃった。まさか私が兄貴に殴られてるなんて、何となく後ろめたくて言えなかったのよ。ホントは兄貴と色々あってケンカしたの。兄貴の肋骨折ってやったわ。ねぇ加地くん、西本さんは恨まないでね。恨むなら私を恨んでいいから」 それだけ言って、野原は立ち去っていった。 加地はうなだれたまま、身動き一つしなかった。 かなりショックを受けている感じだった。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

447人が本棚に入れています
本棚に追加