吸血鬼の檻。

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   一度で良いから太陽を見てみたかった。  お母さまの言いつけで、私は日が落ちてからしか家の外に出られなかったし、昼間には窓は全て厚い板で隠されてしまい、太陽はおろか、その光さえ家の中に届くことはなかった。  だから、私は生まれてから一度も太陽を見たことがない。  なぜそこまで太陽を避ける必要があるのか、私には全く理解できなかった。  家の中は暗くて、ジメジメして、カビの臭いが酷かったし、ムカデやネズミが部屋のすみを横切ることなんて日常茶飯事。  そんな環境が大嫌いだった私は、前に一度だけお父さまに相談をしたけれど、お父さまはただ『暗いから仕方ない』とおっしゃるきりで、ろくに相手もしてくれなかった。  私は太陽の光がとても明るいことを知っていたから、暗いのなら窓を開ければいいのにと、いつも思っていた。  お父さまとお母さまに内緒で、こっそり窓を開けようとしたこともあったけれど、その時はあと少しというところで見つかってしまい、私は酷く叱られて、三日間地下室に閉じ込められた。  さすがにそのときは、泣きながらもう二度と開けまいと誓ったけれど、時がたてば誓いなんて好奇心に負けてしまうもの。私の太陽に対する興味が再び疼きはじめるのに、そう時間はかからなかった。 「ごちそうさまでした」  私は昼食のスープを飲みほして、席を立つ。急いで飲んだので、少し気分が悪くなった。  毎食出されるこのスープも私は大嫌いだ。赤と黒を混ぜたような色をしていて、鉄の味がする。飲み込もうとすると、のどに絡み付いて、何度も吐きそうになる。  六人用のテーブルでは、まだお父さまとお母さまが昼食をとっているけれど、私は二人よりも早く席を立つ必要があった。  いつもは全員食べ終わってから席を立つので、怪しまれないかと心配したけれど、どうやら大丈夫なようだ。  私は一人、速くなる鼓動の音を覚られないようにしながら、自分の部屋へと向かった。  
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