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部屋に入った私は、まず、邪魔が入らないように、扉の前にベッドを移動させた。
慎重に移動させたつもりだったけれど、ときどき大きな音がしたので、もしかしたら気付かれたかもしれない。
けれど、少なくともこれで簡単には扉は開かないから、私が太陽を見るだけの時間は稼げるだろう。
なにせ、あとは窓を開けるだけなのだから。
私の部屋の窓は、家の中にある他のどの窓よりも厳重に封じられていた。厚い板は壁に打ち付けられて固定され、更にその上から覆い被せるようにして、鉄格子がはめ込まれている。
それは、前に私が窓を開けようとしたときに、もう二度と開かないようにと、お父さまが施した結界だ。
しかし、その結界は私が何ヵ月も前から、少しずつ、少しずつ壁を削り、鉄格子を外してしまったから、今ではもう機能しない。今は壁に引っ掛けて落ちないようにしているけれど、軽く持ち上げればすぐにでも外せる。
その下の厚い板も、同じく簡単に外せるよう、何日もかけて釘を抜いた。
これらの準備が全て整ったのは昨日の夜。私はドキドキして眠れなかった。
「なにをしているんだ!」
扉を叩く音。向こう側からお父さまの怒鳴り声が聞こえる。
大丈夫。今度は私が結界を張ったから、邪魔はさせない。
鉄格子を軽く持ち上げて、ゆっくりと外す。
厚い板にそっと手をかけて、力を込める。
少しだけずれた板の隙間から光がこぼれ、部屋の中に一筋の光が射す。
ああ、これが太陽の――
大きな音。お父さまが扉に体当たりをしている。
あとは、この板を外すだけ。
ベッドの結界が破られる。
お父さまが部屋の扉を開けるのと、私が板を外したのは、ほぼ同時だった。
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