不安定な第一章

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…ところで、下駄箱というのは高校になっても鍵とか付かないのかね? 軽く歪んだ扉ならば付いている……が。それでは役不足だ。かなりの割合で。 まぁそれというのも、 どっさあぁぁぁ。 と流れ出る異物、旧時代の遺産とおぼしき恋文、現代風に言うとラヴレターが流れ出て来るのを未然に防ぎたいのだ、俺は。 普通の男子生徒からみたら羨むべき事態。 …なのだろうか。 いやいや、いっくら何でも『入学式』の日にってのは違和感アリアリだろう。 違和感っつーか、怖えぇよ?マジで。 実際に例えると、こうゆうの慣れてるはずの友人Mが数歩後退する位。 …このまま帰る訳にも行くまい。 足元に有る数枚を拾い上げ、名前を確認する。 そこには、『from佐々木 陽向』と丸みを帯びたきゃわいい字。 あーあー、なんか学級委員がどうたら言ってた人だ。 で、取り敢えず名前は見たから、次の確認だ。 ぺら。 『from佐々木 陽向』 ぐしぐしと目をこする。 『from佐々木 陽向』 ………………………………。 あの…何処かでお会いしませんでした?あなた(文字)。いえいえついさっき。 ついでに手に余っているもう一枚を見る。 『from佐々木 陽向』 予想…してたけども。 取り敢えず手元のそれらを鞄にぐしぁっと詰め込み、靴の周りにあるおびただしい数の残りも詰める。 最後に思い出して自分の靴を出す。 ばたん。 「よーし水輝、帰るぞー」 「今…、開けてから閉めるまでに凄い色々な事が…」 「なかった」 「いや、ホントに色々…」 「なかった」 「……そうか」 無理矢理封じ込め、靴を履く。履……く。履………けねぇ。 靴の中にも入ってるんですけど。 なにが?ってもう少し上の行読めば分かるよ、うん。 おにゃのこって怖いな、と思いました。 その後靴の中の異物(遺物)を鞄に入れて、水輝と帰路についた。
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