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それから数分後。
団地の中、街灯の明かりの下を渡りつぎ辿りついたのは赤い屋根とベージュの壁、前面の庭には薔薇の花が植えてある至って普通の家。
単刀直入に言うとまいはうすだった。
重い足を気合いで動かして、その家の玄関まで歩く。
しかし……。
この程度で疲れるとは春休み中に大分鈍ったかな……。
毎日寝っ転がってるからだな……と。
「………………?!」
無駄な事を考えつつ玄関の前に立ち、違和感を感じた。
いや違和感というか……何か、殺気、もとい、違う。
いつも襲われ続けている自分にしか分からない『何か』だった。
脊椎が痺れるような、体が硬直する程に強い力。
反射的に首がちぎれんばかりに後ろを振り向く。
が、
「……………………」
そこには何もなく、誰もいなかった。
至って普通の風景。
気のせい、か…………。
考え過ぎなだけだろう。
そうだ、きっとそう。神経質なだけだったのだろう。
そう思う事にして、玄関の扉を開ける。
「ただいまー……」
「おかえりなさーい、ご飯にする? お風呂? それとも……、わ」
ばたむ。
「イマノハキノセイイマノハキノセイイマノハキノセイ」なんで閉めるの?」
そうだ。気のせいなのだ。
目の前に存在する隣の家に本来住んでいるはずで別の高校に進学したロングヘアーふわふわウェーブのセーラー服にエプロン装着中幼馴染みさんも。
ふふははははは…………。そうだ、そうそう。
気のせい気のせい気のせい、
「……聞いてるの?」
なんかじゃないですよねー。
「スミマセンデシタ」
「分かればよろしい」
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