不安定な第一章

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十数分後。 キッチンからは人が消え、二人は食卓を囲んでいた。 朋美は先にご飯を済ませたようだったので、ただ座っているのも暇なのかやたらと話し掛けて来る。 「それ、美味しい?」 「あぁ、まぁ」 「にふふふふふふ。自信作」 「へぇ……」 ていうかお前が作ったのかよ……。 当時の規約だと届けるだけのはずが凄い事になっている。 父さん、母さん、気付け。 「……ありがとう、どんどん食べてね」 ……なんかものっそい嬉しそうだな。頬が分かりやすいくらい赤らんでいる。 いつだって俺は曖昧なリアクションしかしてないのだが。 ……もぐもぐ。 「でさでさ、高校どうだった?」 間を開けて、決心したかのように朋美が問い掛けて……いや、問詰めてきた。 「……どう、とは?」 「だから…その…女の子と話したり……とか…した?」 ざわ。 ざわ……。 ざわ…………。 「……してないよ」 「そっかぁ。良かったー」 ……俺レーダー凄ぇな。 すんでのとこで死亡フラグ回避、と。 らぶれたーの事言ったら死んでたかも…。 ――あの後ろ手に隠した果物ナイフで。 「中学の時は寄ってたかって海大あまたアマタで大変だったよねぇ」 「……そうね」 君もその一人だよ、とは言えなかった。
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