不安定な第一章

17/21
前へ
/60ページ
次へ
父親と母親が帰って来る時間になると面倒なので、早めに帰そうとご飯を食べ終え自然な流れで玄関へと導く。 いつも通りに。 ただ、いつも通りに。 「おやすみ」 「うん、おやすみなさい」 「……明日も来るのか?」 「……来て、欲しいの?」 いや、別に。 「…来なきゃ困る」 「あははは、確かにそうだね」 そうでもないよ。 「……そうだね」 「明日も学校だよね?……浮気、しないようにね」 誰がいつ誰の彼女になったんで? 「大丈夫だよ。おやすみ」 「うん、それじゃ、ね」 じゃあな。と一声掛け、扉を閉じる。 名残惜しそうに見えた朋美の顔は、すぐに見えなくなる。 数秒あってから回れ右をして階段をたこたこ登り、自分の部屋にたどり着く。 樹はまだテレビだろうか。 ふぅ……。と、人知れず溜め息を吐き、思う。 「いつも通りだ……」 嘘つきな自分も、何もかも。 輝く月も。 部屋の様子も。 弟も。 朋美も。 おそらくは妹も。 ただいつも通りだった。 自分を保持するための、偽った自分の保持に意味があるかは分からない。 けど、今んとこ死んでないから正解だろ。 多分、きっと、おそらく。 生きてるからセーフだ。 「…………………」 …ぽつり、と。 雨音が聞こえた。 雨雲、か……。 今頃は月が隠れているだろうな…。 「………だからなんだってんだよ」 雲は月を覆い、見えなくする。 それは、どう足掻いても変わらない事実だった。 ~~~~~~~~
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1471人が本棚に入れています
本棚に追加