遺ス想ヒ

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頬を膨らませてブツブツと文句を言っている市村少年の様子に土方は先ほど自分が不意に発した言葉を思い返した。 “アイツ”が同じぐらいの歳の頃、こんな子供らしい所を見た事は一度もなかった。 正確にはそうなるよう自分が仕向けた。 抱く目的の為に。 アイツの置かれた境遇を嫌と言うほどよく知っていた俺は何度となく餓鬼なんざいらねェ、そう言い続けて幼い心を支配した。 年に似合わない表情(カオ)を作らせ、行動もそれに見合うようにさせて。 徐々に総てを奪っていった。 その頃を思い出してはギシリと軋む胸に、悔やんでいるのか?と頭の中でもう一人の自分が問い掛けてきた。 ああ、そうだな。 後悔はしてるさ。 だが、それはその事に対してじゃない。 痛みを覚える胸の原因も。 だってそうだろ?俺が後悔なんざすりゃアイツがテメェの総てを懸けてまでしてきた事が全部、水の泡だ。 それだけは、何があってもしちゃならねェ。 .
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