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“ザァ……ザァ……”
波の音が聞こえる……
僕の頭に響いてくる……
痛い……痛すぎる
「……ク、ルーク!!アンタ、さっきから何ぼーっとしてんの!!」
「リ……リナ、あまり大声で喋らないで……。僕が船酔いするのは……君も知ってるだろ!?」
僕の幼馴染みであり、ユーラスティア王国の王女であるリナは、大声出して話しかけてきた。ただでさえ頭痛と吐き気が酷いのに、僕の耳元で喋っていた。
「このヘタレ!!まったくアンタは……昔から船酔いしてるし……。いい加減に治しなさいよ!!」
「む……無茶言うなよ!!生まれつきの体質を、治せって言われて治せる訳ないだろ!!??」
その僕の言葉を聞いて、リナは大きなため息をついた。そして何かを諦めたかの様な表情をして、扉に手をかけた。
「……しょうがないわ。誰かに酔い止めの薬、貰ってくるから……遠くでも見て待ってなさい」
「ぁ、うん……分かった」
「とりあえず船長さんに聞いてくるわ」
そう言ってリナは、船の中に戻っていった。僕は後部デッキで、リナに言われた通り……遠くを眺めていた。
「本当は……違うんだよ、リナ。船が駄目なんじゃなくて……、波の音が駄目なんだ……!!」
僕はリナの幼馴染みだけど、貴族なんかじゃない。いわゆる召し使いの家で、たまたまリナの遊び相手に選ばれただけだった。
リナは優しいけど、怒らせると酔っ払いのおじさん達並に騒がしくなり、しかも只でさえでかい声が、もっともっと大きくなる。…………正直に言えば、かなりの迷惑少女だった。けどそんな彼女でも、僕や信頼する人達には優しいから大丈夫だったりする。
「……遠くでも見て、リナを待ってよう……」
僕はリナの言う通り、遠くを見て待っている事にした。そうしていたら船の中から、リナらしき足音が、ドタバタ走り回っているのが聞こえた。
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