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ふと目に留まった一枚の着物。
彼岸花が刺繍がしてある。
母を思い出す。
母は真っ赤な彼岸花が大好きだった。
彼岸花なんて不吉な…と思っていた。
しかし母は
「赤色を見ると、緋華を思い出すわ。」
そう言って、冬が近くなると彼岸花を見つけては眺めていた。
緋い華…。
緋華は昔を思い出し、その着物を手に取る。
すると店主の四十くらいの女が話しかけてきた。
「お客さん、恋人に?その着物綺麗でしょう。お客さんの恋人ならさぞかし美しいんでしょうね。」
緋華はやはり男装をしているから男にしか見えなかったのだろう。
緋華は店主に着物を渡した。
「これをくれ。」
「ありがとうございます。」
店主は深々とお辞儀をして、着物を受け取り、丁寧に風呂敷に包んでくれた。
「すまない。金はここに置いておく。」
緋華は巾着に入った金を店主の側にあった台の上に置き、風呂敷をもらった。
「またのおこしを。」
緋華は近くの宿屋に入り、明日の支度をする。
刀を手入れし、紅を取り出す。
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