394人が本棚に入れています
本棚に追加
「姫君でございます!!」
ある城で響く女中の声。
その城の主は、息を切らしながら、自室へ入ってきた女中の姿をゆっくりと見る。
「姫…とな。」
「えぇ。元気な姫君でございます。」
男がゆっくりと腰を上げ立ち上がる。
「……。」
男は無言で歩き出し、隣の部屋の襖を開けた。
「あ…あなた…」
若く美しい女が布団を被り、部屋へ入ってきた男を見た。
「姫君だったと…」
「…えぇ。」
女は隣で眠っている赤子を見つめた。
小さく色の白い愛らしい赤子だった。
「何故、女子など…」
「可愛い姫君ではありませんか。」
男は小さくため息をついた。
「名はどうします?」
「名など勝手に決めればよい。」
「緋華(ひばな)…緋(あか)い華で、緋華です。」
女は微笑み、赤子の頬を撫でた。
「男ではなかったか。」
「あなた…なんて事を言うんですか。天から授かった大切な子を…」
「…すまぬ。しかし我はお前の身を案じてだな…
世継ぎを産んで欲しかった。」
男は女の隣に座った。
「ありがとうございます。ですが私は大丈夫ですわ。」
女は微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!