プロローグ

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「姫君でございます!!」 ある城で響く女中の声。 その城の主は、息を切らしながら、自室へ入ってきた女中の姿をゆっくりと見る。 「姫…とな。」 「えぇ。元気な姫君でございます。」 男がゆっくりと腰を上げ立ち上がる。 「……。」 男は無言で歩き出し、隣の部屋の襖を開けた。 「あ…あなた…」 若く美しい女が布団を被り、部屋へ入ってきた男を見た。 「姫君だったと…」 「…えぇ。」 女は隣で眠っている赤子を見つめた。 小さく色の白い愛らしい赤子だった。 「何故、女子など…」 「可愛い姫君ではありませんか。」 男は小さくため息をついた。 「名はどうします?」 「名など勝手に決めればよい。」 「緋華(ひばな)…緋(あか)い華で、緋華です。」 女は微笑み、赤子の頬を撫でた。 「男ではなかったか。」 「あなた…なんて事を言うんですか。天から授かった大切な子を…」 「…すまぬ。しかし我はお前の身を案じてだな… 世継ぎを産んで欲しかった。」 男は女の隣に座った。 「ありがとうございます。ですが私は大丈夫ですわ。」 女は微笑んだ。
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