第五章

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遊女はパァッと顔を明るくさせて、緋華の腕を引いた。 「こっちよ。」 遊女に連れていかれた部屋は『椿の間』と書かれていた。 「さ、入って。」 遊女に言われるがままに部屋へ入ると、中は広く、さらに襖の向こうには布団が敷いてあった。 「……。」 緋華は黙ったままだった。 そんな緋華など気にもとめず、遊女は緋華に紙を渡した。 「何かお飲みになる?」 「…いや。いい。」 緋華の顔は強張っていた。 「どうしたの?」 「なんでもない。なぁ、そなたの名を聞かせてほしい。」 「…春花(しゅんか)。春花よ。」 「そうか…春花は何故、私を部屋へ呼びたがる?」 「…貴方が…好きだからよ。」 春花は目をうっとりとさせて、緋華を見る。 「…好き?それは商売用か?」 「ち、違うわ!」 春花は緋華に抱き着いた。 「一度でいい!貴方に抱かれたいの!!!」 春花が緋華を抱きしめる力が強くなる。 「…何故…よりによって私なのだ。」 「貴方が…いたから…」 「春花…。」 春花は緋華の頬にソッと触れた。 目を閉じ、口づけようとした。 しかし緋華は春花を押した。 「どう…して?」 春花はぽろぽろと涙を流す。 「すまない…ずっと黙っていて…」 「え…?」
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