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緋華は着物の帯をシュルシュルと外した。
春花は緋華がその気になったのかと思い、目を輝かせた。
しかし、緋華が着物を脱いだ時には、春花の目は輝きを失っていた。
「これが私だ。私は女だ。」
緋華はグッと下唇を噛み、春花を見た。
春花は恐る恐る緋華の胸に巻いてあるサラシに手を触れた。
「女…ですって?」
春花はその場に座りこんだ。
緋華は小さく頷いて、春花同様、座った。
「すまない。騙していて。しかし…私は女である事を捨てた。だから私はあえてお前に何も言わなかった。」
「どうして…女…なの…?」
春花は緋華を見た。
「どうして女なのよ!!!」
「私とて…女になどなりたく…なかった。」
「え…?」
「体を売り、生きていく女もいる。女だからと言って農業をやらぬ女などこんな時代にはいないだろう。
男は毎晩のように女を抱きにくるヤツもいる。妻子がありながら、こうした遊郭に足を運ぶ輩もいる。
女は男には力では勝てない。
良いように弄ばれ、捨てられる。そんな女に私はなりたくなかった。
だから男が近づかぬように女であることを隠し、女を守れるように男のような力もつけたのだ。」
緋華は一滴の涙を流した。
「私は女である自分自身を一生呪うだろう。」
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