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緋華の真剣な眼差しがなんだか春花には哀しく感じた。
「お前は…男に体を買われ…辛くはないか?」
緋華の問い掛けに春花は自信を持って答えた。
「私は男に体を買われてるんじゃない。売ってあげてるのよ。生半可な値段じゃなくて、高額で。
それくらい私は安い女じゃないし、私だって客を選ぶ。
緋華…貴女は逃げた。女である自分から。女であることのせいにしている。
本当は貴女…とっても弱い人間なのね。」
春花は緋華を抱きしめた。
「…春花…すまない」
「もういいわ。」
春花は緋華から離れ、ニコッと微笑んだ。
「いつか素敵な殿方と一緒になってね。」
「…それは無理な話だ。」
緋華もニコッと微笑み、部屋から出た。
「待って。」
「なんだ?」
春花は簪を緋華に差し出した。
「貴女にあげる。」
「…私には似合わないさ。」
「そんな事ないわ。貴女がいつか…自分を越えられるように。」
緋華は簪を受け取り、深呼吸をして、部屋から出た。
「いつか私も人を愛せるだろうか…?」
緋華はボソッと呟いた。
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