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「あんた…相当苦しそうだね。病でも患わってんのかい?」
蛍は女に薬を渡した。
「ゴホッゴホッ。そうかもしれませんね…。一度もお医者様には診てもらったことがないですけれど。」
女は蛍が差し出した液状の薬をグイッと飲み干した。
「とりあえず、咳は止まるだろう。安静にしなよ。」
「すみません…」
女の顔色は蒼白で、今にも倒れそうだった。
「…大丈夫かい?」
「はい…すみません。」
「あんたみたいな病人が、何故一人でいたんだい?」
「人を探していて…」
「人?」
「えぇ。」
女は目を閉じ、幸せそうに微笑んだ。
「私には娘がいるんです。今は…17、8になりますかね…。
その娘に会いに、江戸まで参りました。」
「そうか…。」
女は蛍に紙切れを渡した。
「こんな感じの娘なんですがね。名前は…」
「これは…っ。」
蛍はふるふると震えた。
「どうしました?」
(まさか…こんなことって…)
蛍は女の顔をまじまじと見た。
(確かに…似ている。でも…)
「そうそう。娘の名前は緋華って言うんですよ。」
女は確かに緋華と口にした。
その瞬間、襖が勢いよく開かれた。
「なんだと…緋華だと…?!」
緋華が血相を変えてそこにたたずんでいた。
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