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「えぇ…あの子が…緋く燃えるような恋をして、華のように美しい女性になってほしくて…。」
緋華は固唾を飲んだ。
まさか…本当に…?
「どうだい緋華。当たってるかい?」
蛍が緋華に小さな声で聞いた。
緋華は小さく頷いた。
「しかし…あんたの母親ってのは…」
「あぁ。」
私ははっきり覚えている。
あの日…
よく晴れ渡る青空が、
一瞬で紅く染まったあの日。
まだ小さかった私。
母は私を連れて走っていた。
でも…
母は炎に包まれ、息をひきとった。
私は泣きながらも、走ってその場から逃げた。
十年たった今でも忘れない。
そう…
私の母は死んでいる。
なのに今こうして、私の目の前で生きている。
触れることができる。
忘れることなんてなかったはずの母の顔。
でも今は何故か思い出せない。
本当にこの女が母なら…
何故…抱きしめたくならない?
何故…違和感を感じるのだ…
緋華はしばらく黙ったあと、その場で倒れてしまった。
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