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緋華が気がつくと、そこはなんだか懐かしい雰囲気の城の中だった。
「ここは…」
なんだか懐かしい匂い…
緋華はふらふらと歩きはじめた。
しばらく歩くと庭についた。
大きな池がある。
錦鯉がゆらゆらと泳いでいる。
緋華がぼうっとそれを眺めていると、背後から声がした。
「母上!!」
「え?」
緋華が振り返ると小さな子供が緋華にしがみついてきた。
「母上…何処に行ってたのです?」
子供が顔をあげ、緋華の顔をジッと見た。
「お前…?」
その子供は幼い頃の緋華だった。
緋華は不思議に思いつつ、子供である自分を引き離す。
「私はお前の母ではない。母上がどうかしたのか…?」
「母上じゃ…ない?横顔が母上にそっくりだ。」
子供の緋華はしゅんっとした。
「母上…お城が燃えてから姿が見えないんだ。何処へ行ったか知らないか?」
緋華はドキッとした。
あぁ…この頃の私は母上が死んだことをまだわかっていないのか…
緋華は小さな緋華の頭を撫でた。
「お前の母上はな…遠いところへ行ってしまったんだ。」
「遠いところ…?」
キョトンとする小さな緋華だったが、緋華は構わず話続けた。
「あぁ。いつかお前も行ける。だが、まだその時ではないだけだ。」
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