第六章

2/10
前へ
/106ページ
次へ
―――― 緋華が気がつくと、そこはなんだか懐かしい雰囲気の城の中だった。 「ここは…」 なんだか懐かしい匂い… 緋華はふらふらと歩きはじめた。 しばらく歩くと庭についた。 大きな池がある。 錦鯉がゆらゆらと泳いでいる。 緋華がぼうっとそれを眺めていると、背後から声がした。 「母上!!」 「え?」 緋華が振り返ると小さな子供が緋華にしがみついてきた。 「母上…何処に行ってたのです?」 子供が顔をあげ、緋華の顔をジッと見た。 「お前…?」 その子供は幼い頃の緋華だった。 緋華は不思議に思いつつ、子供である自分を引き離す。 「私はお前の母ではない。母上がどうかしたのか…?」 「母上じゃ…ない?横顔が母上にそっくりだ。」 子供の緋華はしゅんっとした。 「母上…お城が燃えてから姿が見えないんだ。何処へ行ったか知らないか?」 緋華はドキッとした。 あぁ…この頃の私は母上が死んだことをまだわかっていないのか… 緋華は小さな緋華の頭を撫でた。 「お前の母上はな…遠いところへ行ってしまったんだ。」 「遠いところ…?」 キョトンとする小さな緋華だったが、緋華は構わず話続けた。 「あぁ。いつかお前も行ける。だが、まだその時ではないだけだ。」
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

394人が本棚に入れています
本棚に追加