第六章

6/10
前へ
/106ページ
次へ
こうやって触れてみればわかる。 ひんやりとした蒼白な腕。 緋華はグッと涙をこらえ、母の瞳を見た。 「…貴方のお父様に吹き込まれたのです。」 「私の父…」 正直緋華は父が嫌いだった。 父は女である緋華を忌み嫌った。 母以外の女を女と見ようとせず、女では後継ぎに出来ぬと言われ一度も話した事はなかった。 「父上はまだ生きておられるのか?」 「えぇ。貴女を探しているわ。」 「今更何故…。」 「貴女が幕府に付いたと聞いてね…」 「私を利用しようと言うのか…っ」 緋華は心の奥底で何か沸々と込み上げる感じがした。 「貴女に…後継ぎになってほしいと…」 「ふざけるな!私はもう家を出たのだ!アイツとは関係ない!」 緋華はギュッと拳を握る。 「今更遅い。私は女を捨てたのだ。」 「どうして?!何故、女を捨てたのです?!母は貴女が美しい女性になるようにと…何度も言い聞かせたはず…それなのに!」 「母上っ!もう成仏してください…貴女はもう死んだ人間です!」 「私に…死ねと…言うのですね。」 「ちが…」
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

394人が本棚に入れています
本棚に追加