第六章

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母は涙をツーッと流し緋華を抱きしめた。 「母は…お前の身を案じているのです。 お前が…父上に利用されてしまうのが…」 「母上…」 緋華はグッと母を抱きしめた。 母の良い匂いが鼻を通る。 「緋華!」 襖が勢いよく開かれ、どすどすと、葵が部屋へ乱入する。 「葵…」 「あんたが緋華のかーちゃんか…」 「緋華…この方は?」 「あぁ…こいつは…」 緋華が言いかけると葵が割って入ってきた。 「緋華の恋人の葵です!」 「まぁ…」 「な…!違うんだ。母上。私はこんなヤツ好きでもなんでもない!」 緋華が葵の頭を殴る。 「緋華…顔真っ赤。」 「黙れ!少しは空気を読まぬか!」 「緋華…」 母が緋華にソッと触れた。 「母上…?」 「こんな素敵な人がいたのね。」 「素敵じゃない。」 「是非、お義母さんと呼ばせてください。」 「呼ばせるかっ!」 母の手をギュッと握る葵を引き離すと緋華は葵を部屋から追い出した。 「はぁ…はぁ…」 緋華は一旦呼吸を整えて、母の前に向き直った。 「母上。私は父上に会いに行きます。」 「そうですか…」
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