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「なら…母が案内しましょう。父上のもとへ。」
「…はい。」
「明朝にたちましょう。」
緋華は頷き、部屋から出た。
「緋華…」
「…春花か。悪いが部屋に私の母がいる。世話してやってくれ。」
「わかった。」
春花は緋華に言われた通り、部屋へ入っていった。
緋華は隣の部屋に入った。
「どうだったかい?」
「蛍。悪い…明日の朝ここを出る。」
「また急な話だねぇ。」
「父上に会いに行くんだ。」
「……っ。へぇ。あんたを捨てた張本人かい。」
「…やはり私は捨てられたのだな。」
「あぁ。」
緋華は小さくため息をついた。
ふと部屋の隅に目をやる。
葵が浮かない顔をして、膝を抱え座っていた。
緋華はそっと葵に近づいた。
「どうした?」
「……なんでもねぇ。」
そっぽを向く葵はまるで子供のようだ。
蛍は二人を気遣い部屋から出て行く。
「葵…何をふさぎ込んでいる?」
「…緋華は…辛くねぇのか?」
「何が?」
「親に捨てられたり、親が死んだり…」
「………どうだかな。私自身よくわからぬ。哀しみなど昔に捨てた。」
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