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緋華は立ち上がり、部屋から出ようとした。
「あんた、ここで働かないかい?その様子じゃ、経験なさそうだし。高く売れるよ。」
蛍は緋華の顎をクイッとあげる。
「可愛い顔してるんだからさ。」
「五月蝿い。斬るぞ。」
緋華は蛍の手を払い、部屋を出た。
「あらぁ、お侍さん。お話済んだぁ?」
先程話し掛けてきた遊女がまたも話し掛けてきた。
「あぁ。失礼する。」
「待ってよぉ。お客さんなら大歓迎だよ。」
「…すまない。またの機会に…な。」
「約束よ。ほら。ゆびきりげんまん。」
「…あぁ。」
緋華は遊女と小指を交差させた。
「♪ゆびきりげんまん、嘘ついたら、針千本飲ます、指切った。」
遊女は笑顔で去っていった。
緋華はふぅっとため息をつき、屋敷を後にした。
――――――
「ここが…影亘大名の屋敷か。」
緋華は目の前にある大きな屋敷を見上げる。
頭にすっぽりと被った布の隙間から見た。
「こいつも金が好きそうだ。」
緋華は屋敷から離れ、側にある茶屋へ入る。
「いらっしゃいませ。」
娘が話しかけてきた。
「すいません、団子を一つ。」
「かしこまりました。」
娘が店の奥へ入るのを確認すると、緋華は席についた。
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