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中学3年の秋。
「碧っ一緒に帰ろ♪」
長い黒髪をふたつに結んだ碧に声を掛けるのは、同じクラスの友達。
「えっ!?美希ごめんだけどもうちょっと待って!!」
「また"あいつ"が帰るまで待ってるんだ。」
美希はあきれた顔をしながら碧の横に座り、そして碧の肩に腕をまわした。
「それにしても綺麗な顔してるよねぇ。」
グラウンドの方を眺めながら美希は細い目をして言った。
少し間を置いて
「でも………性格悪いって噂だけどね。」
そう、サラサラで薄い色の髪をした、白い肌の大きな目の"あいつ"は、碧の通う中学で性格が悪いと噂されているのだ。
美少年なのにモテない理由はそれか??
「光くんは皆が言う様なんじゃないよ…。」
碧は少なくとも他の誰よりも、性格は悪くないと光の事を信じている。
そしてそんな碧を美希は心の中で応援しているのだ。
そうこうしていると、グラウンドで男子達とサッカーをして遊んでいた光が、2人の友達を連れて碧達の方へ向かって来た。
碧はそれにいち早く気がつき、碧の胸の鼓動はたちまち早く鳴り出した。
しかし光達は碧達に用事があるワケではない。
たまたまふたりのいる場所が校門前なのだ。
いつもドキドキする瞬間。いや…大抵光を見るとそうなっているが。
帰り際に挨拶をするのが碧の恋の日課。
光が近付いて来る。
10m…5m…3m…1m………。
碧の心臓は最高潮に高鳴っている。
真っ赤な顔を頑張って持ち上げ、光の方に目を向ける………と
光と目が合った!!!!
だがすぐに逸らされる。
光達が碧の前を横切り2m程進んだ時、
「光くんばいばいっ」
綺麗な後ろ姿に挨拶をした。
3人いるが光限定のばいばい。
実はこの先に、碧が光を性格が悪くないと信じる要因があるのだ。
そう……。
碧が挨拶をした後、振り向きはしないが "ばいばい"を返してくれる。
ポケットに入れていた右手を、自分の顔の横で振って。
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