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碧は嬉しそうに美希に光のマネをして見せた。
「見た!?見た!?」
「うん…見た見た」
「ねっ!!光くん優しいでしょ!?」
「……あれって優しいってゆうの?」
美希は眉をしかめながら言った。
「いや…うーん…」
碧は言葉を濁らせる。「というよりも可愛いっ!!!!」
はいはい……。
美希はあきれ笑いをした。
脈あり……。
碧は最近そんな事を思い始めた。
この中学に入学して1年、2年、3年とも光と碧は同じクラスになった事がなかった。
話した事もない。
噂ばかり広まりイメージだけでしか光を知らない。
入学したての頃の一番人気はもちろん光だ。
だが時が経つにつれ光の人気は下がり始めた。
皆噂に惑わされ、本当の光を知ろうとする前に冷める。
性格重視の碧はもともと光に興味はなかった。
顔はいいけど性格は悪い……。
影で弱い者いじめをしてるらしい子には興味ない。
万引きをしてるらしい子には興味ない。
そんな碧がこんなにも光を好きになるとは誰もが予想打にしなかった。
きっと碧本人も。
運命の出会い(碧がそう呼んでいる)が起こったのは中学3年になってからのあの日。
2組の音楽の授業が終わり、美希達と話しをしながら職員室横に続く階段を降りていた碧。
話題は光。
あんな噂があっても、やはり女子はあのプリティーフェイス(これも碧がそう呼んでいる)には敵わないらしい。
悪口を言いながらも可愛いよねぇなどと褒めちぎる。
そんなんだから図に乗ってんじゃないのかい?
碧は目を細くして心の中でつっこみを入れた。
「あんな可愛い男子と付き合えたら幸せだよねぇ」
ひとりの女子が碧に話題を振る。
「あり得ないっ!!顔が良くても性格悪いんじゃ嫌だよ!!」
思いっきり否定する碧。
あり得ないあり得ない…
心の中でくり返す。
「顔だって皆が言ってる程可愛いとかカッコいいとか思った事もないし!!」
完全拒否だ。
そんな話しをしながら碧達は職員室の前の廊下を歩いていた。
ここは外に面しているので少し冷たい風が碧の頬をなでる。
3組の男子がウォータークーラーの取り合いをしている。
一緒にいる女子のひとりが美希に小声で言った。
「光がいる」
碧はその声が自分に届く前に光の存在に気付いていた。
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