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ピピピピ…
目覚まし時計の音が耳に届く。
早く起きろと急かす様に。
「ぅ、うぅ~ん…」
『あと五分だけ…。』と口で言わず、態度で示すように寝返りを打つ。
むに。
寝返りを打つと何かに当たったのか、柔らかくそして暖かい感触が肌を通して伝わる。
その柔らかさにもう少し触っていたい気持ちもある。だけど…
僕は一人暮らしだ。
生憎彼女と呼べる存在はいない。
じゃあ今僕が触れてるこの柔らかいものは何…?
ゆっくりと目を開けると、そこには一匹の黒猫が気持ち良さそうな顔をして寝ていた。
「…よしよし」
親が子供をあやす様に頭にそっと手を乗せ、艶やかな毛並みを確かめるように撫でる。
この黒猫は…3日前に怪我をして道で横たわっていたのを、僕が見付けて拾ってきて手当てをした。
それから程無くして怪我も治り、今ではこの家を気に入ったらしく住みついている。
この猫の柔らかな温もりがとても心地いい…。時間が経つのも忘れてしまうくらいに…。
ガチャ!!
「朝だぞ~♪」
ノックも無しにドアを開けて入ってきた朝から元気なこの子は…
藍澤 夏帆。小さな頃から世話焼きな幼馴染みだ。
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