二十夜[おじゃま道草~1~]

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7年前の6月、夜10時ごろ、 自宅の電話がなりました。 いつになく、どきっとする音だったのを覚えています。 ミュージシャンの馬場君からでした。 「どうもオカシイ、口では説明できない。 夜分申し訳ないが、来てみてほしい」 とのこと。馬場君はバンドの合宿所として、 川越に近い、ある一軒家に引っ越したばかりでした。 いつにない彼の深妙な声に、いやーな緊迫感を感じましたが、 長い付き合いの彼の頼みなので、行ってみることにしました。 そして、出かけようと玄関にでた瞬間、 目の前のドアを誰かがいきなりノック。 開けてみると、友人の茅野君が一升瓶をかかえて立っていました。 馬場君に呼ばれて出かける旨を話すと、 「馬場君とは面識も有るし、単独で行くべきではないと思うので同行する」 と言い出しました。 とりあえず車を出し、その車中で話し合いました。 その日はたまたま暇で、急に私の顔を見たくなったのだそうです。 茅野君はもともと感の鋭い人で、私の顔を見た瞬間、 「何かあったな」とピンときたといいます。 馬場君はいくつかの因縁を抱えた人で、 以前から問題を起こしやすいタイプの人でした。 茅野君は、私を通して、馬場君の波乱万丈ぶりを知っていましたが、 今回は今までとは違うように感じる、という点で、意見が私と一致しました。 車で30分ほど走ったとき、茅野君が突然、 「うわぁーーっ」と声をあげました。 話を聞くと、 「一瞬道路の前方に、身長50mはあろうかという真っ赤な仁王さんが、 『来るな!』のポーズで立ちはだかった」
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