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7年前の6月、夜10時ごろ、
自宅の電話がなりました。
いつになく、どきっとする音だったのを覚えています。
ミュージシャンの馬場君からでした。
「どうもオカシイ、口では説明できない。
夜分申し訳ないが、来てみてほしい」
とのこと。馬場君はバンドの合宿所として、
川越に近い、ある一軒家に引っ越したばかりでした。
いつにない彼の深妙な声に、いやーな緊迫感を感じましたが、
長い付き合いの彼の頼みなので、行ってみることにしました。
そして、出かけようと玄関にでた瞬間、
目の前のドアを誰かがいきなりノック。
開けてみると、友人の茅野君が一升瓶をかかえて立っていました。
馬場君に呼ばれて出かける旨を話すと、
「馬場君とは面識も有るし、単独で行くべきではないと思うので同行する」
と言い出しました。
とりあえず車を出し、その車中で話し合いました。
その日はたまたま暇で、急に私の顔を見たくなったのだそうです。
茅野君はもともと感の鋭い人で、私の顔を見た瞬間、
「何かあったな」とピンときたといいます。
馬場君はいくつかの因縁を抱えた人で、
以前から問題を起こしやすいタイプの人でした。
茅野君は、私を通して、馬場君の波乱万丈ぶりを知っていましたが、
今回は今までとは違うように感じる、という点で、意見が私と一致しました。
車で30分ほど走ったとき、茅野君が突然、
「うわぁーーっ」と声をあげました。
話を聞くと、
「一瞬道路の前方に、身長50mはあろうかという真っ赤な仁王さんが、
『来るな!』のポーズで立ちはだかった」
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