二十夜[おじゃま道草~1~]

3/11
前へ
/1346ページ
次へ
彼はその当時、仏像の知識をほとんど持ち合せておらず、 「仁王」と表現しましたが、 後日写真集を見せて確認したところ、 明王部の中でも不動明王の立像に一番似ていたそうです。 初めての訪問だったので、馬場君に最寄りの駅前まで迎えに出てもらいました。 馬場君を駅で拾い、車中で「何事か」と問うと 「格安で二階家、いい物件だと思ったが、どうもオカシイ、 とにかく来て、見てから、意見を聞かしてくれ。」 といいます。 到着すると、そこは目の前を高速道路が走り、 雑木林に三方を囲まれた10戸ほどの分譲住宅の中にある一軒でした。 囲まれていない開いた方の、 道路に面した角にたっており、築10年位でした。 車を降りると、まず、私はその家に向けてカメラのシャッターをきりました。 梅雨の中休みといった気候で、蒸し暑い夜でした。 「はまったな」…その場に立った時の素直な感想でした。 その家の外見で気になった点を挙げてみましょう。 ・全ての敷地内の雑草が外側へ向かって伸びている。 ・敷地内の南西の角に3本の木(高さは2階の軒とほぼ同じ)がある。 ・3本の内、南よりの1本は立ち枯れになっている。 ・分譲住宅なので、周囲の家屋と同時期の築のはずだが、 それだけが傷みが大きい。 隣の住人が網戸ごしにこちらを覗いているのを気にかけながら、中へ。 「むさ苦しいところだが、まあはいってくれ。」 馬場君のさそいに、玄関へ一歩。 「く、くさい、何だ?」 …というのが内部を見た第一印象でした。 茅野君は開口一番、 「猫、飼ってるのかな?」
/1346ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2733人が本棚に入れています
本棚に追加