二十夜[おじゃま道草~1~]

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「昨日、2階に居たら1階で物音がしたんで、 『買物に行ってたヤツが戻ってきたかな?』 と思って下へ降りてきたんだ。 そしたら、玄関のドアは開いてたんだけど、誰も居ない…。 よく見ると、近所の猫が入り込んでたんだな。 ところがそいつがなかなかつかまらない。 ちょっと掴むと、必死で引っ掻いて抵抗する。 この引っ掻き傷、見てみなよ。 そこで、窓を開けてやったんだな。 ところが追い回したけど、猫は窓を無視するんだね。 そして、そのうち、猫が玄関へ走ったんだ。 『やった、出てくぞ…』 そう思ったら、猫が変な行動をとったんだ。 玄関に降りるやいなや、ビタッと立ち止まって急に向きをかえたんだね。 そして俺の足下をぬけて階段上がって、2階の窓から屋根越しに逃げたんだ。 で、さぁ…。その、玄関での行動なんだけど、本当に変なんだよね。 何か、目の前に恐ろしいものでもいて、 あわてて引き返した…という感じなんだ。 俺に追いかけられるよりは、よほど怖そうだったよ。」 この話を聞いた茅野君は、 「その猫、何かに操られてたんじゃないかなぁ。」 と、コメント。 私は、その話の間も、廊下を猫が行ったり来たりしている様な感じがしていました。 「その猫はたまたまそうなっただけで、普段は生きていない猫がうろうろしているみたいだね。」 私がそういうと、すかさず茅野君は、 「うん、今も廊下をふっと影が通った様な気がしたよ。」 と、意見が一致。 しかし、大切なのは、さっきの茅野君のコメントです。 私は、茅野君の勘(感)を生かすつもりで、彼にたずねました。 「でも、本体は猫じゃないな。台所へ行ってみる?」
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