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「ただいまハクア」
「おっかえりー! ハクアさんはおかげさまで、もうすっかり目が覚めたよ!」
「よかったね」
テンションの高いハクアの言葉を、いつも通りに軽く流す。
何事もなかったように、クロアは普通だった。普通を装ったつもりでいたが、ハクアはクロアをじっと見ている。
「ねえクロア、何かあった?」
「何も無いよ」
双子だからこそ分かる、些細な違いでもあるのだろうか。ハクアは何かがあったのだと感じた。
だがクロアは何も無いと答えたので、ハクアはすぐに話題を変えた。クロアが何も無いというのなら、それは聞く必要の無いということで、ハクアはすぐに話題を変えた。
「あ、そうだ。力の使い方なんとなく分かったよ。なんか、心ん中で《浮かべ》!!って思うと浮かぶんだよ!! まあ、さっきから上手くいかなくて、天井に何度も頭ぶつけまくってるんだけどさぁ……」
痛そうに、ハクアは自分の頭をさすった。よく見ると、少々涙目である。
「正確なイメージが必要なんじゃない?」
「せーかくですか」
「例えばどの辺りで、どんな風に浮かんでるか、とか」
「なるほど!」
「多分、慣れればそんな細かいイメージも必要無くなると思うし……ハクアなら出来るよ」
そう言ってクロアはハクアの頭に、右手を置いて撫で始めた。ハクアは嬉しそうに笑った。
その手には、ハクアとは違う模様の、入れ墨のようなモノが描かれていた。
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