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タクミ「!!?」
巧は心底驚いた。彼女は初めて会ったはずなのに、自分の名前を知っていた。
一歩後退り、目の前の少女を見下げる。
タクミ「……俺そんなに有名人なわけ?」
―――あまり変わんないな。同学年か?
少女「まあ……追っかけまでさせていただきました。
………あっ、貴方の投手の能力にですよ!」
少女は誤解を招くような発言に立ち上がって、慌てて付け足しをした。
少女「井岡のおじいさんの孫だと聞いたの。広島に行くおじいさんにくっついて中国大会の試合見せてもらったわ」
タクミ「…………」
楽しそうに話す少女とは対照的に、巧は不機嫌な顔をする。
少女「同い年なのに、こんな大人顔負けのボールを投げれるなんて!とても興奮したわ」
新田特有の方言の訛りがない、標準語を話す少女。
少女「あ、このボール!貰ってもいい!?」
そう言い、足許にあるボールを拾い上げる。
それをしっかり握り締め、巧を見つめる。
タクミ「………勝手にしろ」
素っ気なく返し、日の沈み始めた林を出ようと、足早に階段を上がる。
少女「やった!……って、ちょっ、待ってよ!!」
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