第1話 桜の雪

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タクミ「………なぁ」 不意に巧から話し出した。 少女「うん?」 タクミ「あんた、中国大会の準決勝観たんだろ?」 少女「うん、観たよ?」 タクミ「……アレ、なんだと思う?」 巧からの突然の提示。 彼女は少し考えてから、ハッと気づいたように顔を上げた。 少女「アレって、原田君の打順のとき三振したヤツ?」 一瞬眉間に皺を寄せたが、すぐ頷いた。 タクミ「最後の球……俺は、“シンカー”だったと思ってる。 バットを振る軌道もタイミングも合ってたんだ。でも手元で沈んだ」 巧の中で走馬灯のように駆け巡るあの日の記憶。 ―――俺が打てなかった 悔しさ。 ―――俺が投げられない球を他の奴が投げられる 怒り。 全てが巧を鈍らす。 爪が食い込むほど掌を握る。 悔しさと怒りで肩が小刻みに震える。 俯きながら悲痛に歪む表情。 ―――おもしろくない ―――出来ないわけない ―――勝てないわけない      この俺が!!  
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