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タクミ「………なぁ」
不意に巧から話し出した。
少女「うん?」
タクミ「あんた、中国大会の準決勝観たんだろ?」
少女「うん、観たよ?」
タクミ「……アレ、なんだと思う?」
巧からの突然の提示。
彼女は少し考えてから、ハッと気づいたように顔を上げた。
少女「アレって、原田君の打順のとき三振したヤツ?」
一瞬眉間に皺を寄せたが、すぐ頷いた。
タクミ「最後の球……俺は、“シンカー”だったと思ってる。
バットを振る軌道もタイミングも合ってたんだ。でも手元で沈んだ」
巧の中で走馬灯のように駆け巡るあの日の記憶。
―――俺が打てなかった
悔しさ。
―――俺が投げられない球を他の奴が投げられる
怒り。
全てが巧を鈍らす。
爪が食い込むほど掌を握る。
悔しさと怒りで肩が小刻みに震える。
俯きながら悲痛に歪む表情。
―――おもしろくない
―――出来ないわけない
―――勝てないわけない
この俺が!!
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