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広「いや…随分昔の話だし、お前には関係ないと思ったんだ」
ピクリと荷解きをしている手を反応させた。
―――この人……何もわかってないんだな
タクミ「…関係あるかないかは、俺が自分で考えるよ。父さん」
広「………」
広は呆然とした。
なんだか言い返せない。
話題を別のモノに変える。
広「あ、ほら巧。あそこのクリーム色の建物が、4月から通う新田東中だよ。でも大分暗くなってよく見えないけど…」
タクミ「知ってるよ」
キッパリと言い放つ巧。
左手に野球ボールを握る。
これは巧の癖であった。
ボールを常に自分の手近なところに置いておく。
引っ越し中の車の中でも肌身離さず、上着のポケットに入れていた。
タクミ「野球部はそんなに強くない。今年は主力選手が抜けて、地区大会の優勝さえ危うい」
広「それも調べたのか」
広はボールを手で弄んでいる巧を感心しながら見る。
広「弱いと原田投手には物足りないかな。
地区大会でもたもたしてるようじゃ、全国大会なんて……」
タクミ「行くさ」
苦笑気味に言う広に対して、弄んでいたボールをキャッチし、巧は言いきった。
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