第1話 桜の雪

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広「いや…随分昔の話だし、お前には関係ないと思ったんだ」 ピクリと荷解きをしている手を反応させた。 ―――この人……何もわかってないんだな タクミ「…関係あるかないかは、俺が自分で考えるよ。父さん」 広「………」 広は呆然とした。 なんだか言い返せない。 話題を別のモノに変える。 広「あ、ほら巧。あそこのクリーム色の建物が、4月から通う新田東中だよ。でも大分暗くなってよく見えないけど…」 タクミ「知ってるよ」 キッパリと言い放つ巧。 左手に野球ボールを握る。 これは巧の癖であった。 ボールを常に自分の手近なところに置いておく。 引っ越し中の車の中でも肌身離さず、上着のポケットに入れていた。 タクミ「野球部はそんなに強くない。今年は主力選手が抜けて、地区大会の優勝さえ危うい」 広「それも調べたのか」 広はボールを手で弄んでいる巧を感心しながら見る。 広「弱いと原田投手には物足りないかな。 地区大会でもたもたしてるようじゃ、全国大会なんて……」 タクミ「行くさ」 苦笑気味に言う広に対して、弄んでいたボールをキャッチし、巧は言いきった。  
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