100人が本棚に入れています
本棚に追加
――――春
寒い冬を過ぎ、暖かい陽気に包まれる道。
日だまりと咲きかけの桜の匂い。
新鮮な匂いの立ち込める新田市。
小高い山々が列なる町。
全てが新鮮な世界。
セイハ「兄ちゃん、着いたで」
タクミ「っ……ん…」
車の後部座席に居る者に知らせる弟:青波。
微かに呻き声をあげ、ゆっくりと瞳を覗かせる。
鋭い目の輪郭、見据えるような真っ直ぐの瞳。
綺麗な顔立ち、琥珀色の短髪。
――原田巧 (12)
中学進学間近の3月の終わり。
生粋の都会育ちの少年が、家族とともに新田の地を訪れた。
タクミ「着いたのか…」
そう呟き、ゆっくりと車から降りる。
微かに残ってる梅の花の匂いが鼻をつく。
セイハ「綺麗やね兄ちゃん!新鮮な匂いがするで」
タクミ「そんなにはしゃぐことか?」
素っ気ない態度で青波に問いかける巧。
最初のコメントを投稿しよう!