第1話 桜の雪

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――――春 寒い冬を過ぎ、暖かい陽気に包まれる道。 日だまりと咲きかけの桜の匂い。 新鮮な匂いの立ち込める新田市。 小高い山々が列なる町。 全てが新鮮な世界。 セイハ「兄ちゃん、着いたで」 タクミ「っ……ん…」 車の後部座席に居る者に知らせる弟:青波。 微かに呻き声をあげ、ゆっくりと瞳を覗かせる。 鋭い目の輪郭、見据えるような真っ直ぐの瞳。 綺麗な顔立ち、琥珀色の短髪。 ――原田巧 (12) 中学進学間近の3月の終わり。 生粋の都会育ちの少年が、家族とともに新田の地を訪れた。 タクミ「着いたのか…」 そう呟き、ゆっくりと車から降りる。 微かに残ってる梅の花の匂いが鼻をつく。 セイハ「綺麗やね兄ちゃん!新鮮な匂いがするで」 タクミ「そんなにはしゃぐことか?」 素っ気ない態度で青波に問いかける巧。  
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