第1話 桜の雪

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      タクミ「……すごいな。シャーロック・ホームズみたいだ」 セイハ「ホームズは全部読んだよ」 本当に巧は感心した。 と言うより、恐怖さえも感じるくらいの推理力ようなものを使う青波。 冷や汗を一筋流し心の中で“妙なことは出来ないな”と言い聞かせたのは、言うまでもない。 セイハ「僕よう学校休むけんな」 不意に話題を変える青波。 セイハ「なっ 兄ちゃん、新田におったら僕元気になれるかな」 タクミ「………」 セイハ「僕も、兄ちゃんみたいになれる?」 それは青波の憧れ続けていた願いだった。 病弱な青波とは違い、活発になんでも自由に野球ができる兄、巧の存在は輝かしいほど大きかった。 ―――元気になれば、兄ちゃんのように自由に野球ができる。 青波はそう思っていた。 だが ―――お前には無理だよ、青波 巧にはわかっていた。 環境の変化くらいで元気になれるわけない。 病弱な身体が治るわけない。 タクミ「……さあな」 視線を手に持ったボールに落とす。 あえて口には出さない。 それは巧の細やかな優しさと、青波に関心がないことを示していた。  
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