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タクミ「……すごいな。シャーロック・ホームズみたいだ」
セイハ「ホームズは全部読んだよ」
本当に巧は感心した。
と言うより、恐怖さえも感じるくらいの推理力ようなものを使う青波。
冷や汗を一筋流し心の中で“妙なことは出来ないな”と言い聞かせたのは、言うまでもない。
セイハ「僕よう学校休むけんな」
不意に話題を変える青波。
セイハ「なっ 兄ちゃん、新田におったら僕元気になれるかな」
タクミ「………」
セイハ「僕も、兄ちゃんみたいになれる?」
それは青波の憧れ続けていた願いだった。
病弱な青波とは違い、活発になんでも自由に野球ができる兄、巧の存在は輝かしいほど大きかった。
―――元気になれば、兄ちゃんのように自由に野球ができる。
青波はそう思っていた。
だが
―――お前には無理だよ、青波
巧にはわかっていた。
環境の変化くらいで元気になれるわけない。
病弱な身体が治るわけない。
タクミ「……さあな」
視線を手に持ったボールに落とす。
あえて口には出さない。
それは巧の細やかな優しさと、青波に関心がないことを示していた。
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