第1話 桜の雪

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祖父「懐かしいじゃろ…おまえうんと小さいとき、まだばあさんが居た頃、一緒に暮らした家じゃ。前はここに紫陽花があったんじゃが……」 タクミ「何?」 巧は祖父の言葉を遮るように問いかける。 タクミ「思い出話ならいいよ。ランニング行きたいんだけど」 祖父「おぉ、そうか。思い出話は興味ないか。悪いのぅ、つまらん話をして」 確かに思い出話など興味がない巧。 だが、祖父に……井岡洋三に用があった。 タクミ「じいちゃん、そんなことより、変化………」 と言いかけて、口を閉じた。 いや、祖父に制止された。 洋三「来ると思っておったよ。おまえの年なら、あの直球だけで充分じゃ」 タクミ「俺の球知ってんの?」 洋三「中国大会の準決勝を見せてもろた」 巧の肩がピクリと反応した。 ―――じゃあ“あれ”を見られたわけだ   ――夏『中国大会』―― 2ストライク、3ボール……これは焦りそうな場面だ。 ――次、打てるな。 俺はバットを握り直し、ボックスギリギリで構えた。  
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