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祖父「懐かしいじゃろ…おまえうんと小さいとき、まだばあさんが居た頃、一緒に暮らした家じゃ。前はここに紫陽花があったんじゃが……」
タクミ「何?」
巧は祖父の言葉を遮るように問いかける。
タクミ「思い出話ならいいよ。ランニング行きたいんだけど」
祖父「おぉ、そうか。思い出話は興味ないか。悪いのぅ、つまらん話をして」
確かに思い出話など興味がない巧。
だが、祖父に……井岡洋三に用があった。
タクミ「じいちゃん、そんなことより、変化………」
と言いかけて、口を閉じた。
いや、祖父に制止された。
洋三「来ると思っておったよ。おまえの年なら、あの直球だけで充分じゃ」
タクミ「俺の球知ってんの?」
洋三「中国大会の準決勝を見せてもろた」
巧の肩がピクリと反応した。
―――じゃあ“あれ”を見られたわけだ
――夏『中国大会』――
2ストライク、3ボール……これは焦りそうな場面だ。
――次、打てるな。
俺はバットを握り直し、ボックスギリギリで構えた。
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