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自覚 ~曇りのち晴れ~
(どうしよう……っ)
香保里は真っ赤な顔を隠すようにベッドへ突っ伏した。
夕方、頼子に尋ねられてから片山のことばかりが頭に浮かんでしまう。恋する乙女らしいというべきか。
とにかく香保里はそんな自分がおもはゆくて、ベッドの上でジタバタしていた。
(うーっ、恥ずかしいよ~!)
枕を抱え転がり回る。どうしようもなく感情を持て余す香保里は、沙奈に電話することにした。
「――あ、沙奈? 香保里です。いま話せるかな」
二~三回携帯を閉じたり開いたりして、覚悟を決める。もう夜だし、断られるかと思ったが沙奈は軽く電話に出た。
『あれ? 香保里が掛けてくるなんて珍しいね。うん、ヒマだし良いよー』
沙奈の明るい声に香保里はホッとした。
「良かった。……あのね、少し相談したいことがあるの」
『良いけど……うちじゃ頼りになんないよ?』
「うん、知ってる」
『酷っ!』
アハハ、と互いに笑いあう。別に頼りにならなくたって良いのだ。沙奈に聞いて貰うだけで香保里は楽になるのだから。
軽く深呼吸して、香保里は話し始めた。
「あの、ね。好きな人が出来たみたいなの」
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