一話 来客

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以前俺がとあるラウンジで働いていた頃……。 ある日、何故か一名の客も入らない……そんな日があった。 差程大きくもない店内は静まり、アイスピックで氷を割る音だけがカウンター付近に響く。 店の女の子達は勿論、数名が出勤していた。 しかし客の居ない店の中、皆頑に口を閉ざしカウンターでうつ向き加減に腰を降ろしていた。 俺もまた、その空気の重さを感じながら無心でただひたすら……氷を砕いていた。 理由はわかっている。 一番奥のBOX席……。 カウンターからは隠れたその席には、オーナーママと一人の女性が腰を降ろしていた。
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