15人が本棚に入れています
本棚に追加
「…何…」
ようやく落ち着いた大花が息を荒くして答える。
「良太さ…昨日、様子が変だと思って聞いたらコイツ、中学までの記憶がないって…」
「…き…!?」
そこから先の言葉が続かなかった。
記憶がない…記憶喪失? まさか…そんな…
でも、それならコイツの今までの言動も納得出来る。
「…くっ…」
大花は力を抜き、息を整えた。麻美もそれを察して体を放す。
「全く…学校生活始まったばかりでこんな騒ぎになりそうなことしちゃって……度胸あるよアンタ」
子供を優しく叱るように麻美は言った。
「うるさい…戻る」
大花はそう言って、良太に背を向けて歩き出した。
しかし、自分の机まで後数歩の所まで行った所で立ち止まり、引き返してきた。
「…あの…悪かった」
目を合わせずに良太に向けて呟いた。直後に早足で席に戻っていく。
「……」
良太は複雑な表情で大花の後ろ姿を見つめていた。
一時間目が始まった。教科は数学。
朝の出来事は出来るだけ考えないようにした。頭がおかしくなりそうだから。
私は確かに見た。自分の目の前で良太が橋から川に飛び込んだところを。
しかし、その飛び降りた本人が私の前に再び、平然と現れた。その本人は現在記憶喪失。もうワケがわからなかった。
最初のコメントを投稿しよう!