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女の子は、闇の中にいた。
『良太…どこ?』
懸命に何かを探していた。
『どこにいるの…?』
女の子は外に飛び出した。
『私、もう誰もいないんだよ…』
女の子は叫んだ。
『私には、良太しかいないんだよ…』
必死に、叫びながら走った。
『良太…良太!』
やがて、大きな橋の上で佇む、男の子が見えた。
『…どうしたの? どうして、そんなに川を見つめているの?』
女の子は問い掛ける。
『…ねえ…どうしてそんな悲しそうな目をしてるの?』
必死に、男の子に問い掛ける。
『…あっ! どうしたの!? そっちは危ないよ!?』
突然男の子は欄干に乗り出した。
『やだ! 戻ってきて、良太! 行っちゃやだよ!!』
男の子はただ黙って、真下に見える川の流れを見つめている。
『私には…もう…良太しか…』
男の子の口が僅かに開いた。
『……!』
男の子の小さな体が見えなくなった。
『私には…良太しか…いなかったんだよ…』
やがて、夜の空に、重苦しい水の音が響いた。
『…良太……何で…』
目が覚めた。
結局授業は上の空。最初の授業なのに惰眠まで貪ってしまったらしい。
体を起こし、大花は教室内を軽く見回した。後五分で授業が終わる、危なげな時間だった。
何とか黒板の文字を写そうとシャーペンを握った。
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