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「…ただいま」
玄関のドアを静かに開ける。
「…おや大花ちゃん、お帰り。しっかり勉強してきたかい?」
今回は入ってすぐにおばあちゃんに見つかった。相変わらずの弱々しい声で尋ねてくる。
「うん…まあまあ」
軽く返答して鞄を置き、洗面所に向かう。
「大花ちゃん、勉強も出来る子だからね…おばあちゃん、よくわかってるよ」
「…はは」
感情がこもらない笑いで返す。
大花はしっかりうがい手洗いを済ませて、おばあちゃんの前に戻ってきた。
「…何だい? 今日は楽しいことあったのかい?」
おばあちゃんが大花を見つめて尋ねる。
「えっ? …あ、いや…取り立てては」
とりあえず曖昧に返しておく。
今日あったことと言えば……朝から不機嫌だった気がする。
「えっと…男友達が出来た」
それ程喜ばしいことには思えなかったが、一応報告しておく。
「ありゃ! …もしかして、ボーイフレンドかい?」
思わず机に頭をぶつけそうになる。
「…んなワケないでしょ…」
「ふふ…そうかい」
おばあちゃんが優しく微笑む。
まじまじと顔を見ると、昨日より確実に生命力が薄れているように感じる。
もうすぐ…一人きりの生活が始まる。そんな予感がしてしまった。
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