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大花(たいか)。親が私につけてくれた名前だ。
両親いわく、込められた願いは、やがて大きな花が咲くよう開いた生き方をするように。
…私は未だその意味を掴みかねている。
それに、私にはまだ花は咲く様子がない。
既にしおれて二度と咲かないと思える蕾のよう…いや、蕾もいいとこかも知れない。
ボサボサの女子らしからぬ髪の毛。いつもムスッとした(自覚している)表情。
私は自分も、自分の名前も好きになれなかった。
でも、今はそんなこと関係なくて。
今教室はいろいろな空気が混じり合っている。
これからの生活に不安を感じている空気。
クラスに中学の友人が少なく、同じくこれからの生活を案じている空気。
偶然友人を多く見つけて安堵している空気。
私はどちらかと言うと、友人がいなくて不安な方だ。
加えて無愛想な性分(自覚している)。
顔にこそ出さないよう努力したが、やはり不安だった。
そんな中、何をするでもなく教室の中を見回していると、男子の中に見覚えのある顔を見つけた気がした。
同時に私の表情は自分でもわかるように凍りついた。
私が一番最初に思い出す思い出と言えば…いや、思い出とは違う。
完全に忘れ去ったと思っていた。
しかし、何もその本人とは関係ないかも知れない。世の中には、三人は自分と瓜二つの人間がいると何かの番組でやっていた…気がする。
だからこの時は忘れようとした。この時だけは…。
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