00 「神」の記憶

4/10
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/240ページ
「? ……え?」 自分でも気付かなかった。 一筋の涙が頬を流れている。 「どこか痛むんですか? 保健室に…」 「いい…どこも痛いところはないから」 慌てる優里を抑えて目をこすった。 本当にどうしたというのだろう。 放課後。おばあちゃんの家。 「おばあちゃーん、来たよー!」 しばらく玄関で待つと、台所からゆっくりとした足取りでおばあちゃんはやってきた。 「あらまあ大花ちゃん。くつろいでいくかい?」 「いや、今日はいいよ。これ、ウチにたくさんあるから」 鞄の中に詰めてあったビニール袋を取り出して、おばあちゃんに差し出した。 中身はリンゴやら何やらの果物。 「いつもありがとうねぇ…またいつでも来るんだよ」 「うん、じゃまた」 何でだろう。最近調子が良くなったというおばあちゃんの様子にも、私は違和感を覚えた。 自宅の前で見覚えのある車が目に留まった。 あれは確か… 「私は別に来たくなかったんだけど? 景子がどうしてもって言うから来てあげたのよ。可愛い妹」 「あーら、頼んだ覚えはないですけど? お姉様。あ、賢斗君も景子ちゃんも遠慮しなくていいわよ」 やはり叔母一家だ。 今回もいつものように、玄関で喧嘩じみた討論を繰り広げていた。
/240ページ

最初のコメントを投稿しよう!