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「? ……え?」
自分でも気付かなかった。
一筋の涙が頬を流れている。
「どこか痛むんですか? 保健室に…」
「いい…どこも痛いところはないから」
慌てる優里を抑えて目をこすった。
本当にどうしたというのだろう。
放課後。おばあちゃんの家。
「おばあちゃーん、来たよー!」
しばらく玄関で待つと、台所からゆっくりとした足取りでおばあちゃんはやってきた。
「あらまあ大花ちゃん。くつろいでいくかい?」
「いや、今日はいいよ。これ、ウチにたくさんあるから」
鞄の中に詰めてあったビニール袋を取り出して、おばあちゃんに差し出した。
中身はリンゴやら何やらの果物。
「いつもありがとうねぇ…またいつでも来るんだよ」
「うん、じゃまた」
何でだろう。最近調子が良くなったというおばあちゃんの様子にも、私は違和感を覚えた。
自宅の前で見覚えのある車が目に留まった。
あれは確か…
「私は別に来たくなかったんだけど? 景子がどうしてもって言うから来てあげたのよ。可愛い妹」
「あーら、頼んだ覚えはないですけど? お姉様。あ、賢斗君も景子ちゃんも遠慮しなくていいわよ」
やはり叔母一家だ。
今回もいつものように、玄関で喧嘩じみた討論を繰り広げていた。
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