00 「神」の記憶

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「…そうかな」 智美も秀美も恵美もいる。 恵美を出産して弱っていた麻美達の母は、今は回復して父と一緒に仕事をしている。 そんな恵まれた家庭だっただろうか、木下家は。ふと思う。 夕方。木下家を出た帰り道。 後ろから赤い車が通り過ぎ、私のすぐ前で急に止まった。 「おお、やっぱり大花ちゃん!」 窓が開いて見覚えのある顔が見えた。 「…優子さん」 と、奥の運転席にもう一人、男の人が座っている。 「やあ、こんにちは。君が大花ちゃんだね」 「…はあ、どうも…」 眼鏡を掛けて髭を生やした顔。もしかしてこの人が… 「私の夫。優里のお父さん。ずっと研究所こもってて何年も優里と顔合わせてないから、きっと驚くよあの子」 「はは……優里の友達なんだってね。これからも娘をよろしく」 二人は言って、柔らかく微笑んだ。 「はい……こちらこそ」 挨拶を終えて、やがて車は去っていった。 …何かが違う。何だろう。 「さあ! 楽しいパーティーの始まりだ!」 「……」 天宮家。 私と麻美と優里が突然呼ばれて来たらこれだ。 「何だよ、テンション低いぞお前ら」 「いきなりパーティー開かれるんだ、どんな反応すればいいのかわからないだろ」
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