15人が本棚に入れています
本棚に追加
「…そうかな」
智美も秀美も恵美もいる。
恵美を出産して弱っていた麻美達の母は、今は回復して父と一緒に仕事をしている。
そんな恵まれた家庭だっただろうか、木下家は。ふと思う。
夕方。木下家を出た帰り道。
後ろから赤い車が通り過ぎ、私のすぐ前で急に止まった。
「おお、やっぱり大花ちゃん!」
窓が開いて見覚えのある顔が見えた。
「…優子さん」
と、奥の運転席にもう一人、男の人が座っている。
「やあ、こんにちは。君が大花ちゃんだね」
「…はあ、どうも…」
眼鏡を掛けて髭を生やした顔。もしかしてこの人が…
「私の夫。優里のお父さん。ずっと研究所こもってて何年も優里と顔合わせてないから、きっと驚くよあの子」
「はは……優里の友達なんだってね。これからも娘をよろしく」
二人は言って、柔らかく微笑んだ。
「はい……こちらこそ」
挨拶を終えて、やがて車は去っていった。
…何かが違う。何だろう。
「さあ! 楽しいパーティーの始まりだ!」
「……」
天宮家。
私と麻美と優里が突然呼ばれて来たらこれだ。
「何だよ、テンション低いぞお前ら」
「いきなりパーティー開かれるんだ、どんな反応すればいいのかわからないだろ」
最初のコメントを投稿しよう!